FC2ブログ

自転車競技とドーピングと

残念ながら、自転車競技とは切っても切れない関係にあるドーピング問題。
前回からの続きで、今回はこれを中心に書きます。

パンちゃんがドーピングしていたのかどうかについては定かでない。
が、そのことに端を発して裁判とスキャンダルに巻き込まれ、心身ともに衰弱し、おそらくもともと精神的に弱い部分があったことも手伝ってドラッグにも手を染め、自殺?に追い込まれたことは事実だ。
ロードの選手というのは、人によって多少早咲きだったり遅咲きだったりすることがあるけれど、だいたいにおいてもっとも脂の乗った時期は20代の後半から30代の初め頃にかけて。
まさにそんな絶頂期に頂点に登りつめ、これから数年はパンちゃんの時代かと思っていた矢先、地獄に落とされてしまった。残念でならない。

'97年のツール、パンちゃん完全復活!そして'98年にジロとツールを制し、Wツール達成!
パンちゃんの時代が来たか!と思った。

ときに、'97年はメルカトーネウノでウィリエールの自転車に乗っていたのだけれど、この時のマシンは博物館になかったな、そういえば・・・。
ダウンチューブにバンダナをかぶったパンちゃんのイラストが描かれた黄色いフレームで、当時、タキザワにフレームが置いてあったのを覚えている。

パンちゃんのような純粋なクライマーが、ジロやツールを制するのは非常に珍しい。
特に、ツールはオールラウンダーでないと勝てない、と言われていた(今も状況は変わらない)。
まさかパンちゃんが総合優勝するなんて、自分を含め多くの人が思っていなかったに違いない。
その頃になるとテレビで毎晩放映されることはなくなっていたけど、最後はウルリッヒに逆転されるのではないかと、ドキドキしながら番組を見ていた。編集された番組だったけれど、結果を知らずに見ていたから緊張感があった。

余談ですが、その'98年のジャパンカップ(宇都宮)に、パンちゃんのいたメルカトーネウノが来ることになっていた。
もしかしてパンちゃんが・・・とちょっとだけ期待したのですが、さすがに来ませんでしたね。10月末といえば通常ならオフに入っているから、無理もないけど。
観戦に行きましたが、メルカトーネウノはポデンツァーナやガルゼッリが来てました。他に大物ではマペイのタフィやザニーニ、ケルメのルビエラなどが来ていた。

そして'99年のジロ。パンちゃんは圧倒的だった。
この年のジロはいつにも増して山岳ステージが厳しかったというのもあるけど(もともとツールに比べジロは山岳色が濃い)、まさにパンちゃんの独壇場。他をまったく寄せ付けぬ強さだった。レースの終盤には、三つのリーダージャージの全てをパンちゃんが獲得していたほどだ。

レースは残り二日。最終日は顔見せのようなものだから、実質的には山岳ステージの一日を残すのみとなった。そしてそれまでの経緯から、ここでもパンちゃんの圧勝が予想された。
・・・が、その日のステージにパンちゃんの姿はなかった。
突然、パンちゃんがレースから姿を消してしまった感じだった。当時、ガゼッタのイタリア語のサイトで毎日結果を追っていた自分は、何が起こったのかさっぱりわからなかった。
自分にとってその年のジロはそこで終わった。

あとになって状況がわかった。
最後の山岳ステージのスタート数時間前、UCIの実施した血液検査の結果(総合15位までの全選手に実施される)、ヘマトクリット(血液中に占める血球の容積率)が規定値を越えたのだ。
パンちゃんはレースから除外されることとなった。

その後については、まさに坂を転がり落ちるかのようだった。
'99年は結局そのまま棒に振り、2000年のツールに復活したものの、もう元のパンちゃんには戻れなかった。その後は休養したり復活したりを繰り返すが、全盛期の走りは見る影もなくなっていた。

昔から、自転車競技とドーピングは切っても切れない関係にある。
パンちゃんがWツールを達成した'98年のツールも、ドーピング問題で大いに揺れた。
発端は、フェスティナのチームカーで禁止薬物が見つかったこと。ビランクやツェーレをはじめ、フェスティナはチームごと除名され、レースを去った。
その後、夜中に叩き起こされて抜き打ち検査をされたことなどに選手が怒り、ステージをボイコットしたり、抗議の意味でレースから去るチームが続出。
'98年のツールは、そんな波瀾に富んだレースだった。

自転車競技の世界で問題となるドーピングはEPOというもので、筋肉増強剤のような一般的に広く認識されているドーピングというものとはちょっと異なる。
EPO(エリスロポエチン)というのは、赤血球の産出を促進するホルモン。もともと体内に存在する自然物質であるため、使用の判別が難しい。
よって、血液中の血球量を規定して、ドーピングの有無を検出している。
ヘマトクリット値と呼ばれるもので、50%以下というのが規定だ。50%を超えるとEPOの使用が示唆される、というもの。
ちなみに、'99年のジロで失格とされたパンちゃんのこの時の数値は52%。

ヘマトクリット値が増えると、血液がドロドロになる。これが50%を超えると、血管が詰まって死亡のリスクが高まるとされる。
実際、過去にはツールのモンバントゥという山の上りで、選手が急死する事故も起きている。ただし、この年は異常に暑かった年で、このときの死因は熱中症と言われているが(体内からアンフェタミンは検出された)。

まだ東ドイツがあった頃には、血液ドーピングというのも聞いたことがある。
これは、自分の血液をいったん採血して保管しておき、競技前に再度輸血して体内の赤血球を増やすという方法。
東ドイツではスポーツエリートを養成するにあたり、そんなこともしていたという話。
ちなみに、'97年のツールを当時23歳のウルリッヒが制したとき、悪い意味でなく、東ドイツで養成された最後のスポーツエリートなどと言われた。

90年代後半より、ドーピング問題が大きくクローズアップされるようになるにつけ、自転車競技にダーティーなイメージが定着してしまった。
一番衝撃的だったのは、ツールを7連覇したアームストロング。
ドーピングが明らかとなり、ツール7連覇のタイトルその他剥奪、自転車競技の世界から永久追放、さらにはスポンサーから超多額の返還訴訟を起こされている。
この人のは常軌を逸する規模で、EPOの他に血液ドーピング、テストステロン、副腎皮質ステロイドなどの使用歴があるとされる。
・・・非常に攻撃的な言動からもわかるとおり、この人は精神に問題があると言われている。

'96年ツールを制したリース、同チームでポイント賞のザベルも後年になってドーピングを告白。
その後も後を絶たない。ウルリッヒ、ランディス、バッソ、ビノクロフ、マヨ、ラスムッセン、コンタドール・・・。
特に、EPOより長い投与間隔でヘマトクリット値を維持可能なCERAの使用がヨーロッパで可能となった2008年以降は、もう泥沼。ツール・ド・ドーピングとまで言われるようになってしまった。
ドーピングの問題は根深く、現在においても根絶できていない。

ちなみに、パンちゃんが制した'98年のツールについても、今から数年前、ニュースになっていた。
出場選手のサンプルを後の技術で再検査した結果、総合上位1位、2位(つまりパンちゃんとウルリッヒ)を含む18名からEPOが検出され、総合3位(ユーリック)を含む12名が疑わしいと判定された、というもの。

確かに。この年のパンちゃんとウルリッヒには、ちょっと抜きん出た感じがあった。
残念ながら、そういうことだったのかもしれない。
'96年のリースも、ちょっと手のつけられない強さを発揮していた。

このように、ダーティーなイメージがすっかり定着してしまった感のあるロードレース。
ドーピングについて肯定する気はサラサラないけど、反面、わからんでもないという部分がないでもない。
というのは、たぶんロードレースというのは辛すぎるのだ・・・。

ご存知の通り、ヨーロッパでは自転車、とりわけロードレースは人気があり、歴史もある。おそらくサッカーの次くらいに盛んなのではないだろうか。
プロチームがいくつもあり、大小含めれば、シーズン中には毎週どこかでレースが行われているといった具合。一部の自転車先進国では、有望な子はジュニア時代からプロと変わらない生活を送っていたりもする。
そんなヨーロッパにおいてでさえ、他のプロスポーツと比べて収入は多くないと思う。いや、むしろ少ないのでしょうね。自転車だけで生活できるのなんて、プロの中でもごくごく一部の人に限られると思うし。
やっている仕事量と天秤にかければ、割に合わない世界なのではないかと思えてしまう。

ロードレースというのはチーム競技です。
個人競技の面がとても強いと思うけど(私見です)、まぎれもなくチーム競技。サッカーやラグビー、バスケットといったいわゆるチーム競技とは明らかに違うけど、チーム競技です。
1チーム9人。ゼッケンの下一桁が「1」から「9」までの9人の選手で構成されている。上の桁の数字はチームごとに異なる。例えば、20番代はメルカトーネウノとか。
通常、ゼッケンの下一桁が「1」の選手がエース、「9」の選手がサブエースで、残りの選手は全員アシスト。
ステージレースでは、チームによって平地のステージでは別の選手を立てたりもするが、基本的にエース以外は全員アシスト。

競技として独特なのは、アシストは初めから自分が勝つためではなく、エースを勝たせるためだけに走るという点。
チームの戦略や、チーム同士のかけひきがあり、そこが見ていておもしろく、チーム競技である所以なのだが、要するに、縁の下の力持ちであるアシストはキツイ・・・。
よほどラッキーなことが起こらない限り、どんなにがんばっても自分がレースに勝つことはない。しかも、アシストするのは肉体的にも精神的にも非常に辛い。
ドーピングでもしなきゃやってられんわ・・・ついついそんな気にさせられてしまいそうだ。
順位が上位のエース級の選手ばかりが脚光を浴びるが、ドーピングは何もエース級の選手だけの問題ではない。チームぐるみで関与していることが多い。

個人的に気持ちはわからないでもないが、やはりいかんですよね、ドーピングは・・・。何よりフェアじゃない。
でも、ロードレースに限らず自転車に限らず、競技というものがある以上、ドーピングというものは絶対無くならないでしょうね、残念ながら。
そもそもどこからがドーピングでどこまでは違うのか、明確に線を引くことは難しい。
そんなわけで、おそらく未来永劫、ドーピングとはいたちごっこになるんでしょうね。

これはドーピングとは違うけど、前にオリンピックのとき問題となった水泳における水着の問題。
これを聞いたとき、ドーピングのことが頭に浮かんだ。
おそらく考え方は近いものがある。本来の運動能力の競い合い、それとはかけ離れたところで競技に多大な影響を及ぼす、そんなところがドーピングと似ていた。
こんなのも含めて、いたちごっこは終わらないに違いない。
言い方を変えれば、これが技術革新や進歩ということになるのかもしれない・・・。

パンちゃんのこと、それからアシスト選手のことについて興味があれば、未知谷から次のような本が出版されています。
「マルコ・パンターニ  ピラータの生と死」 ベッペ・コンティ著
「ラフ・ライド  アベレージレーサーのツール・ド・フランス」 ポール・キメイジ著

パンちゃんのお墓のある墓地_サイズ変更 P1040138_サイズ変更
パンちゃんの眠る墓地                           きれいに整備されています

P1040165_サイズ変更 パンちゃんのお墓_サイズ変更
パンターニ家のお墓                            ここにパンちゃんも眠る

P1040157_サイズ変更 P1040152_サイズ変更
折り鶴を置いてきた                            感動をありがとう!パンターニは永遠に不滅です!

この日の夕飯_サイズ変更
チェゼナティコは食事も安くて美味しかった・・・観光地じゃこうはいきません
関連記事
スポンサーサイト



Comment 0

There are no comments yet.

Leave a comment