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山での遭難について

先日の中央アルプス縦走中、安平路山へ向けてヤブこぎしているとき、笹薮の中で不審な荷物を見つけました。
場所は袴腰山の広いピークから北へ下ったところで、登りの時間で5、6分です。
比較的踏み跡が明瞭なところで、踏み跡を追ってヤブこぎしていると、藪の先に突然ザックのようなものが目に入った。
そこまで行ってみると、まぎれもなくザック。踏み跡の上に銀マットが敷いてあり、その上にザックやギアバッグが置かれていた。
ついさっきまでここで寝てました・・・そんな感じだった。

「ずいぶん大胆なビバークだな」と、まず思った。
最初は近くに人がいるものと思ったのだが、どうにも人の気配がない。「おーい」と声をかけてみても返事はない。
まいっか。
いったんその場を離れて先へ進んだ。

「踏み跡がわからなくなるのが嫌で、踏み跡の上でビバークしたんかね」などと話しながら袴腰山へ向ったのだが、どうにも気になる。
どう考えても普通じゃない。こんな時間に(10:00頃)、ビバーク態勢のままでいるだろうか?銀マットを広げたままどこかへ行くなんてことがあるだろうか?
もう一度戻って確認することにした。

「おーい」と何度か声をかけてみたが、やはり返事はない。
いったい本人はどこへ行ってしまったのだろう・・・。
用足しにでも行って荷物の場所に戻れなくなってしまったのだろうか?それともなにか不測の事態で動けなくなってしまったのか?

何か本人を特定できるものはないかと荷物を確認してみると、ギアバッグの中に貴重品と思しきものが一式入っていた。
9月27日の高速バスの予約票のプリントアウト・・・どうやら9/27のバスで駒ヶ根に来たらしい。
9/27と言えば御嶽が噴火した日ではないか。もしかして御嶽で遭難したと思われていまいか・・・そんなことも考えた。
他には・・・suica、図書館で借りた文庫本、(いくらか数えちゃいないけど)けっこうな額の現金、携帯電話に、家の鍵と思しきものまである。
そして・・・あったあった。本人の保険証のコピーと緊急連絡先。これで確実に本人が特定できる。

保険証のコピーと緊急連絡先を写真に撮って、ひとまずその場をあとにした。
山から下りたら警察に届け出よう、ということにして先へ。
で、次の日の夕方、飯田駅前の交番に届け出ました。

結論を言うと、幸いこの方は無事でした。
届け出た翌日に警察から電話があり、10月1日頃ヘリでピックアップされたと知らされました。荷物は回収不能のため、本人了承の上で残置したということだった。
たったあれだけの荷物が回収できないというのはどういう状況だったのか、詳しいことはわからないが、とにかく本人が無事でなにより。

こんなところでヘリにピックアップされたのはお粗末な話ですが、今回一つ感心したことがあります。
この方が保険証のコピーや緊急連絡先をしっかり携行していた点です。
それもかなり入念なもので、まずは緊急連絡先として妹さんの自宅と携帯の電話番号。それから、どこかの山岳救助機構に加入しているらしく、その会員番号と連絡先。さらには、本人によると地元対応が困難な場合の救助隊要請として、都岳連の連絡先まで書かれていた。
抜かりなく、言わば完璧な状態。

救助は本人が要請したものなのか、それとも下界で心配した別の人が要請したものなのか、そのあたりのことはわかりません。たぶん本人が要請したんでしょうけど、救助要請に使ったはずの携帯電話や家の鍵を含め、貴重品一式まで残置されていた点が解せない。
ま、いずれにせよこんな調子だから、おそらく現地にも計画書を出していたことでしょう。
定かではありませんが、ここは重要なポイントです。

例えば先日噴火した御嶽ですが、計画書はおろか、誰にも何も告げずに出かけていた人がけっこういるのではないでしょうか(噴火一週間前の自分たちのように・・・)。
噴火さえなかったら厳しいところはまったくなく、ただ歩いていれば山頂に着く山ですから、いかにもありがちです。
そうすると、実際に災害に遭われて行方不明になっている方というのは、警察発表よりかなり多いのではなかろうか・・・そんなふうに思っているんですけど、どうなんですかね、実際のところは。
仮に、例えば一人暮らしの人が、誰にも何も告げずに御嶽に出かけていてあの災害に遭ったとすると、もし亡くなっていても誰にも気付かれないのではあるまいか。
もし登山口まで車で行っていれば、車から簡単に割り出せるでしょうけど、公共機関で行っていたとしたらアウトではないでしょうか。自分たちの場合のように自転車だったとしても、まずわかりそうにない。まさに行方不明ということになってしまう。
そんなふうに考えると、ちょっと怖くなる。

緊急連絡先を携行したり計画書を出したりというのは、救命のためというのはもちろんなんですけど、むしろ遺体を捜したり身元を特定するのに役に立つんですね。
関連した話でこんなのがあります。
・・・冬の剱に入る場合は予め決められた日数以前に富山県警に計画書を提出するんですけど(パーティーの中に冬の剱に入った経験者がいないと許可が下りない)、入山するときに警備隊で山タン(発信機)というものを受け取ります。これは要するにビーコンみたいなものなんですけど、用途は主に死体捜索用。長時間にわたって電波を出し続けるので、春になったらヘリを飛ばして付近の山域を探索するようです。

行方不明、というのは残された人にとって辛いことです。
遭難して死体が出てこないというのは山ではよくあることですけど、万一のとき役に立つかもしれないので、緊急連絡先とか計画書とか、そういった備えはやはり必要だと今回の件で強く実感した次第です。

それからもう一つ。別の観点で思ったことがあるんですけど、それは・・・警察って大変だな、ということ。
もし今回の件が遭難事件だったとしたら、位置的に飯田警察の管轄になるのだろうか。
道のないところだから、ヤブこぎをして現場まで行かねばならない。
大平宿から入って今回の自分らのコースを逆から辿るか、もしくは松川町の鳩打峠から烏帽子岳経由で主稜線に出るか。いずれにしても大変な行程になります。
御嶽のように道のあるところならまだしも、こういった道のない山での捜索活動というのは非常に困難。
雪山なんてもっと大変だ。下手をすると二次遭難なんてことにもなりかねない。
でも、それでも行くわけです、仕事ですから。警察のほかに場合によっては自衛隊も。
非常にご苦労なことだと思います。

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踏み跡を追ってヤブこぎしていると突然・・・               現場に近い袴腰山の山頂付近はこんな感じ
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