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利根川本流

奥利根の源流水系の沢に入ろうと思ったら、まず困難なのはアプローチだ。
理由は矢木沢ダム。関東の水瓶、矢木沢ダム。
ダムの作る奥利根湖によって行く手を阻まれるからである。
逆に言えば、矢木沢ダムによって外界から隔離されたことで原始のままの自然を保っている、とも言えるのですが。

奥利根湖には連絡船や遊覧船の類はなく、基本的に船の利用は困難。
否応なしに歩きとなるのだけれど、これが厳しい。ほぼ自然にかえってしまった道しかなく、半ばヤブこぎ同然(湖の、ダムから見て右側(本流左岸)からアプローチする)。
かつては、矢木沢ダムを早朝に出発すれば、12時前後に水長沢出合到着が源流入りする者にとって標準的なタイム、と言われていた(奥利根湖の水位は、ダムが満水時は水長沢出合下、例年の夏は小穂口沢出合付近です)。
夕方までに水長沢出合に到着できないパーティーは、源流水系に入る資格が問われる!などともされたようであるけれど、たぶん現在はこんなタイムでアプローチするのは無理。一日でアプローチするのは難しいのではないかと思う。

ちなみに、小泉共司著の「奥利根の山と谷」の中には次のような記述がある。
『この区間のアプローチの苦しみは、源流水系に入るものにとってきわめてきびしい試練であり、それに耐えた者のみが初めて利根源流の良さに浸ることができると言えよう。』
その名の通り奥利根山域の山と谷について詳しく記述されているので、本山域に入山・入谷しようと思っている人は本書を参考にされるとよろしいかと。

さて、ここまで書きながら、今回我々はカヌーで奥利根湖を渡る。
幸いにも児玉さんの知人のニシさんからカナディアンカヌーを借りることができ、8月5日の夜にニシさん宅へカヌーを受け取りに行った。
バッテリー式の船外機も貸してくれたのだけれど、片道しかもたないだろうということで、船外機は帰りのために温存することにした。
パドルは、現地(奥利根湖)でニシさんの釣り仲間の方から借りる手筈になっている。

計画は次の通り。
奥利根湖をカヌーで漕ぎ渡り、バックウォーターの岸にカヌーと船外機、一部の食料と燃料をデポ。
利根川本流を遡行して大水上山(本流の源頭)へ抜けたら、稜線を平ヶ岳方面へ。水長沢尾根を下降して水長沢出合まで下りる。
デポしたものをピックアップし、水長沢出合でのんびりしてから、帰りは船外機を使って奥利根湖を渡ってくる。

この年のゴールデンウィークに奥利根横断をやっていて、水長沢尾根はそのときに登っていた。
剱ヶ倉山まで国境稜線を歩き、そこから大水上山までの稜線を見晴らしてもいたし、剱ヶ倉山の歩き尾根もそのとき下降していた。
よって、大水上山へ抜けたあとの行程はさほど心配していなかったのだけれど・・・。

「 利根川本流 」

メンバー: 村田、児玉

2005/8/7 晴れ、16:30より激しい夕立
矢木沢ダム 7:50 ~ ボートにピックアップしてもらう 8:30 ~ 水長沢出合手前 9:10 ~ 越後沢出合 12:30 ~ ヒトマタギ 13:00 ~ 滝ヶ倉沢出合 16:00

4:00に太田を出発。
平野部は晴れているが奥利根の山々には雲がかかっていて、今にも雨が降り出しそう。

矢木沢ダムに着き、ニシさんの釣り仲間であるアクツさんらにも無事会えた。
パドルを借りることができて一安心。

カヌーを湖に下ろし、7:50に漕ぎ始める。
目指す水長沢出合は遥か彼方・・・いったい何時間くらいかかるのかと、ちょっと不安になる。
まぁでも、久しぶりに漕ぐカヌーは実に気持ちよかった。

40分くらい漕いだろうか、アクツさんたちのクルーザーが近くに現れた。
言葉を交わすと、「船に乗っていくか?」ということだった。
いや、しかし乗っていくかと言われても・・・まさかカヌーをおいていくわけにもいかないし・・・。
ちょっと回答に困っていたのだけれど、結局、自分らを乗せたあと、カヌーも船の上に引き上げてくれた。そういうことができたんですね・・・ありがたい。

強力なモーターボートでも、バックウォーターまでそこからさらに20分くらいかかった。
あのまま漕いでいたら、まだまだけっこうかかったろうね・・・。
バックウォーターは、水長沢出合の近くまできていた。

カヌーを岸の適当な位置まで引き上げ、裏返しにして木に縛り付ける。
船外機とパドル、それから防水バッグに入れた食料と燃料もカヌーの中にデポ。

沢の装備を身につけて、いざ、出陣!
まずはゴーロ帯を歩く。アクツさんたちもついてきた。
しばらく行くと、「シッケイガマワシ」と呼ばれるゴルジュ帯になる。膝くらいの水量なのでそのまま水線通しに進める。
すると、上流から唐突に雪のブロックが流れてきた。
上でスノーブリッジが崩壊したのか・・・などと話しながら流れが左に曲がると、目の前にドーンとスノーブリッジが現れた。
又右衛門淵だ。
いよいよここからが本番。
最後に写ルンですのシャッターを押してもらい、お礼を言ってアクツさんたちと別れた。

又右衛門淵のスノーブリッジは左岸(右手)より巻き、六ノ沢出合のところで懸垂下降。
井戸沢手前にもスノーブリッジがある。ここも容易に上から巻ける。
ちなみにスノーブリッジは、上を行くか下を行くかの二者択一となる。
基本的に、上を巻けるものはそうしたほうが精神衛生上よろしい。
下を行く場合は、可及的速やかに駆け抜ける。スノーブリッジがいつ崩壊するかわからないので、生きた心地がしません。中は暗く、ひんやりしてます。

巻淵を過ぎ、しばらく行くと越後沢出合。ここにはいいテン場がある。
剱ヶ倉沢出合の30mほど先にヒトマタギがあり、その名の通り利根川を一跨ぎにできる。

剱ヶ倉沢出合~牧ヶ倉沢出合までのゴルジュ帯は、「剱ヶ倉土合」と呼ばれている。
渡渉とへつりの連続で、ルーファイしながら進むのがめちゃくちゃ楽しい。

剱ヶ倉土合の先も、もうしばらくゴルジュが続く。
黒滝沢出合のあたりからゴーロになり、しばらく行くと、前方から白くもやーっとした冷気が流れてきた。
いやーな予感がするとすぐ、前方にスノーブリッジが現れる。
スノーブリッジがあるときはすぐにわかる。まるで前方にドライアイスがあるかのように、白くもやーっとした冷気が流れてくるから。

時刻は16:00、現在地は滝ヶ倉沢出合付近。
よし、スノーブリッジは明朝安定しているときに突破することにしよう。
その手前にある、左岸の小高くなったところに幕営した。

16:30より激しい夕立。素晴らしいタイミングで幕営したものだ。
一時かなり増水した。ちょこっと高いだけのところなので、テントが水浸しになるかとヒヤヒヤしたが、その後雨がやんで事なきを得た。
増水したといっても水深は膝くらいなのだけれど、上流から驚くような大木が流されてきた。自然の力はすごい・・・。
雨が降ったためまともな焚き火はできず(涙)。

2014-09-25_24 又右衛門淵_サイズ変更
又右衛門淵のスノーブリッジ・・・いよいよここからが本番

2014-09-25_27_サイズ変更
ヒトマタギ・・・その名の通り利根川を一跨ぎ

2005/8/8 曇り時どき晴れ、のち雨
テン場 6:25 ~ 裏越後沢出合 7:25 ~ 定吉沢出合先(狭くて暗いゴルジュの先) 7:55 ~ 丹後コボラ沢出合4m滝下 10:00 ~ 大利根滝上 11:00 ~ 西小沢出合手前 12:15

朝、スノーブリッジが安定していて水量も少ないうちに、オイックイを突破。これは大正解!
ちなみにオイックイというのは、滝ヶ倉沢を見送った先の狭いゴルジュ帯のことで、裏越後沢出合までの区間をそう呼んでいる。
この区間のスノーブリッジは悪いものが多く、高巻くのは困難。朝の安定しているうちに下を一気に駆け抜けるのが最善かと思う。

定吉沢の先の狭くて暗いゴルジュは泳ぎあり。

魚止メ滝は、左手の岩稜を登って高巻く。合わせて三つある瀑流をまとめて巻く。
下降ポイントを見極めるのがけっこう難しい。かなり高さがあって急なところをクライムダウンする形になる。

大利根滝は20mあるが、比較的簡単に右壁を登れる。
高さがあるのでザイルを出す(ハーケン要)。
大利根滝の登攀中は天気が良かった。

時間的には今日中に上まで抜けられそうだ。
が、天気が怪しいので、少々早いが、東小沢の先にあった川原の草原に幕営した(12:30)。
ちなみに、その手前のハト平にも幕営可能です。

昨日と違い、快適な上に安全なテン場だ。
テントを張り終えた途端に雨が降り出す。今日も間一髪。
それにしても・・・せっかく泊まりで沢に来ているというのに、結局一日も焚き火ができず(涙)。

2014-09-25_29 オイックイ_サイズ変更
明日への逃走・・・脇目もふらず一気に駆け抜ける(オイックイのスノーブリッジ)

2014-09-25_31 魚止め滝7m二条_サイズ変更
魚止メ滝・・・左の岩稜を登って高巻く(高巻きのあと下降ポイントを見極めるのがけっこう難しい)

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スノーブリッジが次々現れる

2014-09-25_34 魚止め滝上流5m滝_サイズ変更
魚止メ滝上流の5m滝・・・この水量では渡渉できず

2014-09-25_35 魚止め滝上流5m滝_サイズ変更
戻って右から巻いた

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2段7mヒョングリ滝・・・楽しさが表情ににじみ出る

2014-09-25_38 大利根滝_サイズ変更
本流で最大の大利根滝20m

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比較的簡単に右壁を登れる(写真はハーケンを打っているところ)

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大利根滝の登攀中は天気が良かった

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その後もゴルジュにはスノーブリッジが架かる

2005/8/9 曇りのち晴れ
テン場 5:55 ~ 人参滝上 7:15 ~ 水上滝上 8:45 ~ 利根川水源碑 9:45 ~ 藤原山 16:30 ~ 一つ手前のマイナーピークに戻って幕営 17:00

ゴルジュの中の4~5mの滝を次々越えていくと、釜を持つ10m滝が現れる。
一見なんてことのない滝なのだけれど、朝一で泳ぐのが嫌で、一寸行き詰った。壁がツルツルで登れない・・・。
あーでもない、こーでもないとトライした挙句、児玉さんがホールドを発見して左から突破できた。

その先は、稜線までに大きな滝があと四つある。
順に、人参滝:15m、深山滝:20m、赤沢滝:4段20m、水上滝:15m。

人参滝は右のリッジから高巻き。
続く深山滝はザイルを出して右壁を登る。岩が脆くていやらしかった。
赤沢滝はシャワークライム。
最後の水上滝は水流の右側を登った。

水上滝の上に出たのが8:45。これにて滝は完登。
ちなみに、今日はサンショウウオをたくさん見かけました。

詰めは三角雪田になっていて(これが利根川本流の源)、ヤブこぎは皆無。素晴らしい!
9:45に稜線上の利根川水源碑に出た。

たまたま通りかかった登山者に写真を撮ってもらい、平ヶ岳への縦走に入る。
問題はここから・・・。

軽く考えていたのだが、大誤算!
途中から、言うなれば6級のヤブとなった。
目の前に潅木の壁が延々と連なる。笹じゃなくて(笹なら楽勝)、手強いシャクナゲなんかの潅木です。
それはまさに壁で、こいでもこいでもまったく前に進まない。腕が引っ掛かる、足が引っ掛かる、ザックが引っ掛かる・・・ちょっとこれまでに経験したことのないヤブだった。おまけにアブまで追ってくる・・・。
熱射による脱水症状もあって、すっかりヘロヘロになってしまった。
なんと!大水上山の隣の藤原山まで6時間も要してしまった・・・。

水と食料の心配から、これより先へ進むのを断念。
たぶん途中から踏み跡があると思うのだけれど(希望的観測)、どこから現れるのか定かでない・・・。

丹後山へ戻ることにした。
丹後山から本谷山まで南下し、本谷山から十分沢もしくは十分沢尾根を下降、利根川本流に出て、水長沢出合まで本流を下る、そういう計画に変更しよう。
十分沢尾根は、やはりこのゴールデンウィークに下降したことがあり、緩い沢であり尾根であったので、本流まで下れる目算があった。

そうと決まれば、藤原山から30分ほど戻り、一つ手前の平坦なマイナーピークのヤブの上に幕営した。
テントを張ったのは、ビッシリと生えた背の低いヤブの上(地面に接地していない)。よくもテントが張れたものだ・・・。
夜になって短時間雨が降った。必死になって鍋に水を溜めようとしたのだけれど、うまく集めることができなかった(涙)。

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相変わらず微妙なバランスで保持されている・・・突破するのは朝が一番

2014-09-25_43 釜を持つ10m滝_サイズ変更
釜を持つ10m滝・・・一見なんてことなさそうなのだが、一寸行き詰った

2014-09-25_44 人参滝15m_サイズ変更
人参滝15m・・・右のリッジから高巻き

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深山滝20m・・・ザイルを出して右壁を登る(岩が脆くていやらしかった)

2014-09-25_46 深山滝の上から_サイズ変更
深山滝の上から本流のスノーブリッジを見下ろす

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赤沢滝4段20mはシャワークライム・・・このあたり、サンショウウオがたくさんいる

2014-09-25_48 水上滝15m_サイズ変更
最後の水上滝15mは水流の右側を登った・・・これにて滝は完登!

2014-09-25_49 水源碑_サイズ変更
稜線上の利根川水源碑・・・しばし達成感に浸る(これ以降は写真がない)

2005/8/10 雨とガス
テン場 5:35 ~ 大水上山北峰 10:00 ~ 丹後山 10:30

朝から天気が悪い。
雨の中テントを撤収し、5:30過ぎに出発。

昨日登ってきた尾根を、やはりヤブこぎをして戻る。下りである分、昨日より少しマシであるようだ。
ガスで視界がないため、尾根を外さないよう細心の注意を払って進んだ。
途中から雨が激しくなり、昨日同様の激しいヤブに辟易する・・・。

やっとのことで丹後山の避難小屋に到着!(10:30)
人がけっこういるかと思っていたのだけれど、誰もおらず貸切状態。
寒いが、雨を凌げて濡れたものを干せるだけでありがたい。

あまりにもびしょ濡れになってしまったので、今日はこのまま小屋に泊まることにした。

2005/8/11 ガス、下界は曇り
丹後山避難小屋 8:00 ~ 丹後山登山口 9:35 ~ 十字峡 10:05 ~ 野中バス停 11:45

朝になってもガスがとれず視界不良。
これでは本谷山からの下降に不安がある・・・安全策をとって、丹後山西尾根を下りることにした。
つまりは、上越国境稜線の逆側へ下ってしまうということだから、下山後にどうにかしてカヌーを回収しなければならない。

西尾根を6合目あたりまで下りるとガスが消えた。
これなら十分沢も下れたのではないかと後悔したが、時すでに遅し。そのまま西尾根を下った。

丹後山西尾根の登山口まで下り、水を求めて三国(さぐり)川に出ようとしたところ、アブの群れに襲われた。
アブにとっても久しぶりの獲物か、非常にしつこく、群れで十字峡までついてきた。
追い払うためにタオルを振り回していたら、すっかり肘が痛くなってしまった・・・。
不思議なことに、十字峡から先は別世界なのか、その先は一匹も追ってくることがなかった。

三国川ダムの下へくだり、さらに歩いて野中バス停に11:45に着くと、バスは15分前に出たところだった(涙)。
次のバスは13:29・・・たっぷり時間があるので、その間に濡れたものを干しながらバスを待った。

バスで六日町駅へ。
六日町から水上まで電車で移動し、バスが終わっていたためタクシーで矢木沢ダムまで行く。
車をピックアップし、即上牧温泉へ。

カヌーは船で回収しに行こう、とおぼろに考えていた。
奥利根マリンという、奥利根湖に船を出している会社がある。そこへ電話をしてみると、船のチャーター料は三万円とのこと。
ちょっと無理だ。
誠に申し訳ないのだが、ニシさんに頼んで、後日仲間の方の船で回収してもらうことにした。
本当に申し訳ありません・・・。

温泉のあと、定番のたむらで夕飯を食べ、雨が降っているため湯檜曽駅の駅舎内にテントを張って寝た。

翌日、天気は雨のち曇り。
朝一で矢木沢ダムへ戻り、管理事務所に無事下山した旨を伝えておいた。

なんだかどうにも・・・カヌーを回収できなかったので、尻切れトンボのような終わり方になってしまった。
カヌーを貸していただいたニシさんには本当に申し訳ないことをした。
(後日、カヌーは無事回収していただけました。ありがとうございました。)
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