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槍ヶ岳 硫黄尾根(2008年GW)

過去の山行記録の第一弾は硫黄尾根。2008年ゴールデンウィークの記録です。
珍しく写真がたくさんありました。おそらくミノルタTC-1で撮った写真と思われ(写ルンですじゃない)、比較的きれいです。ただ、本人はほとんど写ってないんですけど・・・。
文章のほうは、「稜線」に載せたものをちょっとだけ加筆、修正したものです。

「 '08春合宿: 硫黄尾根~横尾尾根下降 」

メンバー: L村田よ、児玉、鹿山、村田ま

2008/4/29(火)
高瀬ダム 7:00 - 名無小屋 8:30 -湯俣 10:00 - 硫黄尾根取付 10:35 - 尾根上 11:05 - 硫黄岳ジャンダルムP1手前(2,000m付近) 14:00

2:00児玉さんち集合で大町に向かう。
なぜだか大町駅近くの無料駐車場が閉鎖されていて、車で直接七倉まで行く。
意外なことに、七倉には車が一台しかなかった。

装備を整え、指導所に計画書を出し、タクシーで高瀬ダムまで入る。
指導所で話を聞いたところ、今年は雪が多いらしい。これで三年連続だとか。
この時期としては異例なほど人が少なく、一昨日四人組が北鎌だか硫黄に入っているのみとのこと。静かな山を満喫できそうだ。

高瀬ダムから歩き始める。
名無小屋の先から雪が出てきた。
湯俣で吊橋を渡り、水俣川左岸をトラバース。今見れば踏み跡も明瞭で間違いようもないが、冬の北鎌のときは、いやらしく新雪の乗ったこんな急斜面をトラバースできようとはとても思えず、一時間のうちに四回も渡渉する破目となった。

北鎌の時におぼろげながら目星をつけておいたところがやはり取付きのようで、赤布もあった。
本来の登路と思われる浅いルンゼ状のところは崩れていて登れず、その右側の急斜面をヤブこぎして高度を稼ぐ。ところどころきわどい箇所あり。
途中から左にトラバースして踏み跡に合流し、尾根上に出た。そこは広く平坦で、良い幕営ポイントになっている。

ここから雪上の行動となるためスパッツを装着。腐った雪にズボズボ埋まって体力を吸い取られながら、硫黄岳ジャンダルムP1手前まで進んで幕とした。
雪を纏った北鎌がやけに厳しく見え、独標のデカさが目につく。大天井岳の眺めもすばらしい。
北鎌のアプローチも、先天出合まで雪が付いているように見えた。

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初日は硫黄岳ジャンダルムP1手前まで進んで幕とした

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遥か頭上を北鎌が延びる・・・やけに厳しく見える

2008/4/30(水)
6:00発 - 硫黄岳ジャンダルムP6 8:00 -硫黄岳 10:55 -南峰 13:50

予定より30分ほど遅れて4:00起床、6:00出発。
気温が高いのか、早朝にもかかわらず雪はあまりクラストしていない。

硫黄岳ジャンダルムP1、P2はリッジ通しに進み、P3から10m、20mの懸垂二回で3,4コルに降りる。
P4、P5、P6ともリッジ通しに進む。P6は広くて幕営も可能。
ここから北の方へ針路を変えるが、登ってきた方向にも尾根が延びており、視界のない時は注意が必要。

P6からの下りも急で、ハイマツを掴んでクライムダウンし、小次郎コルへ出る。ここも幕営可能。
小次郎コルから硫黄岳まで300mの登り。雪の状態が悪くいやらしかった。
その先の硫黄台地は広い平坦地となっていて、視界のないときはまず動けないと思われる。

硫黄台地の先で尾根はストンと切れ落ちている。
左の支尾根に沿って下り、右のルンゼに入る。岩の基部にレリーフがあり、どうやらここが雷鳥ルンゼのようだ。
残置支点のあるところから40m×2回の懸垂下降。今回は雪が豊富であったが、雪の下はガレガレだ。
下まで降り切らずに懸垂終了地点から右上して尾根上に登り返し、南峰で幕とした。

南峰は、テント一張りでいっぱいになってしまう広さだが、360°眺めがすばらしい。
頭上を、北鎌尾根が槍まで延びている。
なだらかな三俣蓮華や双六は真っ白で、スキーパラダイスに違いない。目を凝らすと、双六カールにスキーのシュプールが一本見える。
靴の中は水が溜まるほどびしょ濡れで(今回は革靴)、殺人的な陽射しの中、濡れたものを乾かしながら周囲の景色に暫し見とれた。

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P6から見る硫黄岳・・・正面がルート(小次郎コルから300mの登り)

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硫黄岳山頂

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北鎌がだいぶ近くなった

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硫黄岳ジャンダルムを見下ろす(どれがどれだかはっきりしない)

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硫黄台地の先は尾根がストンと切れ落ちる

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雷鳥ルンゼの下降・・・雪の下はガレガレだ

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雷鳥ルンゼ(岩陰になっていて見えない)を振り返る・・・ちょうど逆「く」の字に下降した感じになる

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南峰で幕

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360°眺めがすばらしい! 頭上を北鎌尾根が槍まで延びている

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足下はけっこう切れ落ちている

2008/5/1(木)
5:10発 - 赤岳ジャンダルムP5先 8:30 - 中山沢コル 10:10 - 赤岳 11:15 - 白樺平 13:30

今日が硫黄尾根のハイライトである。
3:30起床、5:00過ぎ出発。

南峰を下り、赤岳ジャンダルムP1、P2は湯俣川側の雪の斜面をトラバース。雪の状態が悪く緊張する。
P3は直登。両側がスッパリ切れ落ちているため1ピッチザイルを出す。
浮石だらけでボロボロだ。抱えた岩ごと剥がれて転落という記録も散見されるが、それも納得の悪さである。まさかこの岩は大丈夫だろう、という大きさの岩が平気で動くから怖い。

P3からP4まではリッジ通しに進み、P4から天上沢側の岩場を20m×3回の懸垂で4,5コルに降りる。
天上沢側の腐った雪面をP5先の尾根上に登り返し、リッジ通しに進む。

P6から湯俣川側に20m×1回の懸垂、P7はクライムダウンも交えながらいやらしいトラバースで巻く。
足下は急傾斜の雪面で、滑落したらまず止まらないだろう。
7,8コルにトラバース気味に登り返すところで、念のため1ピッチ20mほどザイルを出す。

7,8コルから20m×1回の懸垂で中山沢コルに降り立つ。
中山沢コルは、地形図で見る限りは赤岳の先であるが、一般的にここを中山沢コルと言っているらしい。広くて快適な幕場となっている。

その先の赤岳の登りが悪そうに見えるのだが、記録の上ではこれで核心は脱したはず。
が、取り付いてみると自分の目のほうが正しく、赤岳の登りは悪かった・・・特に傾斜の立ってくる最後の30mが悪く、サラサラの雪で、足下がとにかく崩れる。
騙し騙しずり上がって片手が岩に届いたときは一瞬ホッとするのだが、この状態で両足とも崩れたら、体重+20数キロをまず支えられないだろうな、などと考えつつ下を見れば、天上沢まで一直線、200~300mは止まりそうにない。
ザイルは出さなかったが(気付いたときには既に出せなかったのだが)、ここが今ルート中で一番緊張したポイントであった。

赤岳の下りも急で、途中から20m×1回の懸垂でコルに降り立つ。
続く赤岳主峰群はピークが5個あるはずだが、どれがどれだかはっきりしない(ジャンダルムもそうだったけど・・・)。
全般的に湯俣川側をトラバース気味に進む。ザイルは一度も出さなかった。

あまりにも疲れてしまい、その先の広い平坦地で幕とした。
P3先の平坦地と思っていたのだが、どうやらルート図が間違っていて、ここが白樺平のようだった。
予報どおり天気も悪くなってきたし、正しいチョイスだった。
先行パーティーの幕営跡を上手く利用でき、整地の必要もなくて助かった。

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赤岳ジャンダルムP3の登り・・・浮石だらけでボロボロだ

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4,5コルへの下降・・・P4から天上沢側の岩場を20m×3回の懸垂

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下降した岩場を振り返る

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後ろ・・・P3とP4

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前・・・P7、P8と中山沢コルの先に続く赤岳の登り

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7,8コルから20m×1回の懸垂で中山沢コルに降り立つ

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赤岳の登りは悪かった・・・今ルート中で一番緊張した

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赤岳山頂

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北鎌が目の前に延びる

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赤岳ジャンダルムを見下ろす(こう見ると、どれがどれだかはっきりしない・・・)

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その先にどかっと鎮座する硫黄岳

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これから向かう赤岳主峰群・・・これまたどれがどれだかはっきりしない

2008/5/2(金)
5:15発 - 西鎌尾根 6:00 - 左俣岳先 6:30 - 槍の肩 10:00 - 横尾尾根分岐 14:00

3:00過ぎ起床、5:00に出発。
遠目にはけっこう悪そうに見えたのだが、あっけなく45分で西鎌尾根に出た。最初そうだとわからなかったくらい。

西鎌尾根上は風が強く、ところどころ雪が飛ばされて夏道が露出している。
雪屁に注意して尾根上を進む。

西鎌尾根からは、槍の西稜が正面に見える。
取り付くのが大変そうだが、写真で見て以来一度登ってみたいルートである。

千丈沢乗越から、飛騨沢を登下降する人が豆粒のように見えた。
かなり遠いが、今山行に入ってはじめて見る人の姿。

槍の肩への最後の雪面の登りが傾斜がきつくしんどい。肩に出るころからガスってきた。
いつもの調子で槍の肩には人がうじゃうじゃいるかと思っていたが、意外なことに四人しかおらず、よかったような肩透かしを食ったような・・・なんだか妙な気分。
しかもあろうことか、小屋も開いてなかった。こんなこともあるのか・・・確かにものすごい雪で、除雪してあるものの、小屋はまだ雪に埋まった状態である。

天気も悪く余裕もないので、槍の穂先はパス。全員何度か登っているので未練はない。
ガスって視界はないが、トレースに沿って南岳に向かう。
鹿山さんが腹の調子を崩し、ちょっと心配。

中岳の下りで一度ルートをロストしたが、なんとか横尾尾根との分岐地点まで辿り着く。
が、ここから先、トレースは横尾尾根に降りていて(横尾尾根を登ったパーティーのトレースだった)、南岳への最後の登りがわからない。
ここから15分くらいのはずだが・・・しばらく天気待ちをしたがガスが晴れそうで晴れず、大工事で緩斜面を切って幕とした。
ガスが晴れた一瞬、南岳が見えた。

幕営後、ラジオによると明日の天気も朝は怪しいみたいなので、今後の行動について検討する。
この雪の状態では、涸沢岳まで思いのほか時間がかかるかもしれない(計画では涸沢岳西尾根下降)。何よりガスっていたら南岳にも行けないだろう。
そうすると南岳西尾根にも取り付けない。そもそも南岳西尾根は、初見で下りられるのか不安がある。
主稜線を槍まで戻るのはアホらしい。
冬のエスケープの下見も兼ねて、横尾尾根を下るか・・・。
あれこれ検討した結果、指針として明日は横尾尾根を下ることを本命とした。

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昨日は白樺平で幕・・・朝のテン場

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遠目にはけっこう悪そうに見えたのだが、あっけなく西鎌尾根に出た・・・硫黄尾根は槍の穂先に突き上げないところが渋い!

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西鎌尾根からは槍の西稜がよく見える

2008/5/3(土)
5:55発 - 天狗原分岐コル 6:30 - 2,729m峰 8:00 - 2,323m峰 11:05 - 横尾 13:30

終夜風が強かったが、朝方になってやんだ。
4:00に起床すると、快晴であった。前穂北尾根上部の眺めがすばらしい。

ルートは横尾尾根に決定。6:00出発。
日当たり抜群で、雪が腐って歩きにくいものの、上部は特に困難なところもなく順調に通過。

途中、鹿山さんのヘルメットが槍沢側にかなり遠くまで滑落。最初は本人も諦めていたが、なんとか回収できた。
南岳と北穂の東面は雪崩がすごい。引っ切りなしに雪崩れている感じ。
北穂小屋直下の斜面から一発でかいのが出た。雪崩れた後の雪面が生々しい・・・。

横尾尾根からは終始屏風岩がよく見える。
屏風を登って北尾根を詰めるラインは、自然だし、とても魅力的に見える。冬はアプローチが大変だが、そのうち挑戦してみたいものだ。

横尾の歯の通過に2ピッチザイルを出した。
その先は問題なく下るだけに見えたのだが・・・P4とP3の急なヤブの下りが、雪が悪く緊張させられた。腐ったフィックスがあるものの、特に槍沢側が切れ落ちていて、万一の滑落距離を考えると懸垂したくなるような状態が続く。
ヤブがうるさいので、結局ザイルは出さなかった。

P2、3コルから人の声がして、最後に20m×1回の懸垂でコルに降り立つ。
話をすると、下から登って横尾尾根に取り付いた倉敷の年配五人組だった。ここまで涸沢側のルンゼを登ってきたとのことだった。
よかった・・・これで尾根から下りられる。ここからヤブの急登をP2へ登り返すのは考えられない。

涸沢へ続く登山道まで駆け下ると、ものすごい人、人、人に辟易する。いったい今日は何人の人が涸沢に集まるのだろう?
すっかり高速道路状態の登山道を30分ほどで横尾に着く。

一時間ほど濡れたものを乾かしてから、上高地に向けて歩き出す。
新村橋までは作業道を行き、橋を渡って登山道に戻った。
徳沢園もものすごい人、人、人・・・。
明神まで来ると普通の観光客ばかりになる。

17:30に上高地に到着。
18:05の最終バスがあったが、四人なら一人三千円とのことで、タクシーで松本駅に出る。
19:00前に駅に着き、タイミングよく19:08の電車に乗れた。

大町駅からタクシーで七倉へ移動。
風呂は諦めていたが、出迎えに出てきてくれた七倉山荘のオヤジに聞くと、入れてくれるとのこと。ありがたや。やっぱ信州は人がいいですわ。
のんびり温泉に浸かって垢を落とした。

風呂から出て話を聞くと・・・危うくヘリが飛ぶとこだったらしい。
登山口に車がとめてあるなんてのは当たり前のように思うのだが、最近は自殺が多いのですぐに警察に通報があるみたいだ。
現地に登山届を出しといて本当によかった・・・。

出迎えてくれた百さん&桑さんのコンビはすっかりできあがっていたが、絵に描いたような山男で、羨ましいほど活き活きしていた。
我々の硫黄尾根完登を祝って歌ってくれた「雲ノ平の歌?」は心に響いた。
このまま無料で山荘に泊めてくれそうな勢いだったが、飯も食ってないので、長らくの歓談後に七倉をあとにした。
4:00ころ家に着くと、留守電にも大町警察からメッセージが入っていた。

天気には恵まれたが、雪が多く状態も悪かった。
このコンディションで硫黄尾根を計画通り完登できたことで、また一つ自信がついた。
横尾尾根の下りも含め、計画もルーファイも会心の登りではなかったかと思う。
俗に言われる通り、困難度は北鎌より硫黄のほうが高いと思う。なによりルートが長く総合力が問われる。北鎌に比べて標高の低い硫黄は、雪の状態が悪いというのもよく聞く話だ。
真価を発揮する冬にぜひともチャレンジしたいルートである。

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昨日のテン場は槍~穂高の稜線上、横尾尾根の分岐地点・・・大喰岳の先に槍が見える

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なんと快晴であった・・・前穂北尾根上部の眺めがすばらしい

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横尾尾根上部を振り返る

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屏風から連なる北尾根のラインが目の前にドーン・・・しびれる

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横尾の歯の通過

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目の前に迫る屏風岩

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とてもフリーで登れるようには思えません・・・
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