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ビシュケクへの道 その2:二つの峠

2012/9/3 月
始:9:30 ~ 終:18:40 走行:65km
~ Ala Bel峠(3,175m) ~ 峠から40km下ったところ

朝は寒かった。シュラフにくるまっているのが気持ちよくて、いくらでも寝ていられる感じ。
ここのところ連日しごかれていて、出発前から既に疲れていたりする。

アラベル峠に向けて昨日の続きを上る。
ちょっと走ると養蜂家の人たちは姿を消し、代わって遊牧民の世界となる。蜂蜜の代わりにクムス(馬乳酒)が道端で売られている。
夏の間遊牧地にユルタ(ゲル)を張り、山間の草原で馬、牛、羊を放牧する生活。おそらくこの人たちの生活スタイルは何百年、いや千年以上前から基本的には変わっていまい。
南部のチョン・アライ地方同様、人も素朴になった。おそらくこれがキルギス本来の姿であろう。
遊牧民の多くは車など持っていない。持っていても、町の生活者のように無駄に乗り回すようなことはしていない。
馬に乗り、もしくは徒歩であたりを動き回っている。彼らの生活に車など必要ないのだ。

今日は行動食が乏しい。おまけにそろそろお金もない。
ビシュケクの近くまで行かないと両替えはできないだろう。
途中、道路脇のユルタでカフェをやっているおっちゃんに釣られ、ナーンとチャイで空腹を満たした。
おっちゃんがビスケットも少し持っていたので、それも譲ってもらった。

アラベル峠までは25km、途中から時々日が翳り、風も強くて寒かった。
アラベル峠の上りはハッキリ言ってきつかった・・・。決して勾配がきついわけではないのだけれど、とにかくきつかった。
たぶん長いからだろう。ドゥシャンベで会ったワタナベ君が、ここの下りは100km以上あったと言っていた。峠からトクトグル湖までずっと下りだから、確かに100km以上あるだろう。

峠というのは自転車で旅する者にとって特別な意味がある。
が、いつも思うのだけれど、苦闘の末に上りきっても達成感というものがほとんどない。
これはたぶん、峠からの眺めと関係してるのではないかと思う。
峠というのはそういう地形なのだけれど、周りをより高い山々にグルリと囲まれていて、たいてい見晴らしがよくない。車も通れる道となれば、最も通しやすいところに道を通すのだからなおさらだ。
実のところ、これまで国内、海外を問わず、自転車で峠を上って達成感に浸れたことなどほとんどない。

山登りとは違うところだ。
どんな山でも山頂からの眺めは素晴らしい、と言うか山頂に立てばある種の区切りを実感できる。
究極的にはより困難なルートから、山頂を極めようとする登山で得られる達成感ないし充実感はとても大きい。
自分としては、なかなか他のことでこれだけ明確に達成感の得られることはない。
その昔、イギリスのマロリーは「なぜ山に登るのか?」という問いに、「そこに山があるから」と答えた。
山に登る理由なんてあるようなないような・・・問われてもうまく答えられないけれど、おそらく多くの人にとってその理由は、この達成感ないし充実感に浸って自己満足するためであろう。過程が困難であればあるほどより「生」を実感できる、とも換言できようか・・・。

山頂がゴール(もちろん無事に下山せねばならないが)であるのと対照的に、峠というのは単なる通過点に過ぎない。
写真だけ撮ってアラベル峠もサクッと通過しようと思っていたら、そこに二人組のバイカーがいた。
近寄って声をかけてみたのだが、なんだかいつもと様子が違う。いつものような明るい反応が返ってこない。
彼らはモスクワから来たロシア人のバイカーだった。やっぱロシア人て暗いんだよなぁ・・・。これからナルン方面に向かうらしい。

峠の東側はやたらと寒く、峠から先はカッパを着っぱなし。
峠の先は、山裾に広大な草原の広がる、完全なる遊牧民の世界だった。
ユルタが点在し、ものすごい数の馬、牛、羊がいる。ここはアフリカのサバンナか?という感じ。
そんな光景が峠から40km下っても、なおずっと続いている。

なけなしの金で明日の行動食を買おうと寄ったマガジンで、客の人がリンゴをくれた。
ありがたい。実にありがたい。キルギスでこんな親切を受けたのは初めてだな・・・。

草原の中をSuusamyr川が流れている。
道路を外れて草原に入り、川岸に近いところに幕営した。標高2,300mほど。

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アラベル峠への上り

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もう少し・・・                         到着:アラベル峠(3,175m)

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峠にいたロシア人サイクリスト              峠からの下り

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遊牧民の大地を下る

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羊や馬、牛、ロバがいっぱい

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二階建てのユルタ                     道路沿いにあるのはお店

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本日のテン場

2012/9/4 火
始:9:00 ~ 終:18:50 走行:100km
~ Too Ashuu峠 ~ Sosnovka ~ Bokso Jol ~ Bokso Jolの5km先

昨晩は寒くてあまりよく眠れなかった。朝も寒く、久々に夜露も降りた。
テョル・アシュー峠に向けて昨日の続きを走る。
15kmも走ると遊牧民の土地は終わった。あれだけあったユルタがパタッと姿を消し、代わりに定住している人たちの家屋が見られるようになる。道路脇には突如として電線も走っていたりする。
そして驚いたことに一見トルコ並みの、ショップを併設したGSが姿を現した。
お金がほとんどないのに思わず引き寄せられてしまった・・・。
米ドルが両替えできないか試しに聞いてみたが、レートがやたらと悪く、1ドルが40スムにしかならない。今の公定レートは47スムくらいだからかなり悪い。
両替えはやめにして、なけなしの金で缶コーヒーを飲んでGSを後にした。

25kmほど走ると、テョル・アシュー峠への上りに差し掛かる。
峠の標高は3,586mであるが、ここは3,200mほどのところにトンネルが通っている。
それでも上りの標高差はゆうに1,000m以上。ここの上りもなかなかきつかった。

上りの途中、反対方向に下ってくる大型のキャンピングカー20台以上とすれ違った。こいつは珍しい。
何かのイベントか?全車つるんで走っているようだった。
ドイツやオランダ、スイスなど、ヨーロッパのナンバーをつけたキャンピングカーで、どの車にも仕事をリタイアしたくらいの年齢の夫婦が乗っていた。
これがヨーロッパのリッチな人たちの老後の過ごし方だろうな・・・。

峠の上りは、後ろを振り返ると眺めがよかった。
14:30頃、3,200m付近のトンネル入口に到着。
トンネルは2km以上ある。狭くて、大型トラックは中ですれ違えず、大型のみ片側ずつ通行させている。
キルギス人の運転する車の走る、狭くて暗いトンネル・・・これほど恐ろしいものもそうそうあるまい。
自転車の後部にもヘッテンを点滅させて、ビクビクしながら慎重に走った。
トンネルを抜けたときは助かったと思った。いや、決して大袈裟でなく・・・。

トンネルを抜けた峠の北側は景色が一変し、深い山の中となる。
峡谷に向けて一気に下る。
九十九折りの道を下って峡谷に入ると、ものすごい風だった。強烈な向かい風で、下りなのに所々漕がないと進まない。さんざん上らされた挙句に下りでも漕がされるとは・・・こんな理不尽なことはない。
狭い谷で、川沿いの道の両側にガレた山々が迫る。安全に休憩できる場所もなく、一目散に下る。

峠から40kmほど下るとようやく峡谷から脱し、地形が開ける。
さらにしばらくでSosnovkaの集落。ここも町の入口にゲートがあった。
キルギスというより完全に旧ソ連の町といった風。キルギスは場所によってガラリと雰囲気が変わる。
明日の行動食用に甘食のようなものを買って、いよいよスムをきれいに使い果たした。

ここまで来ると山は後方へ去り、あたり一面広い平野が広がっている。
一見どこにでも幕営できそうで、実は道路から身を隠せる場所がない。
そのまま惰性で走ってBokso Jolも通過。ふと道路脇に廃墟となった、と言うか爆破でもされたかのような、瓦礫と化した工場跡のようなものが目に入った。
隣に住む人に聞くと幕営してもよいということで、今晩の寝床決定。
ちょっとアウシュヴィッツを思わせるような不思議な場所。今晩は大手を振ってそこでキャンプ。標高950mほど。

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テン場をあとにする

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ここからテョル・アシュー峠への上り

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振り返ると眺めがよい(霞んでいて写真映えはしないけど)

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                                3,200m付近のトンネル入口

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トンネルを抜けると深い山の中

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一気に下る

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峡谷の中はものすごい風だった             時々牛や羊が道路を塞いでいる

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今宵の寝床
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