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トキヤラフ (6,034m)

2010/9/1 水
あまり眠くもなくウトウト・・・どうやら雪は降ってないようだが、0:00を過ぎてもマルコスが動く様子はない。やっぱガスっててダメなのか???寒くてシュラフから出るのが億劫で、とりあえず1:00までシュラフに包まっていることにする。
1:00を過ぎるとマルコスがガサガサやり出した。たまらず自分もテントから出てみると・・・なんと、なんと、満点の星空!無風快晴ではないか。最高のアタック日和、もう小躍りしたい気分である。ホント、よくよくツイてるなぁ。
昨日まで下痢気味であった腹の調子も今日は久々の快便!体調も申し分ない。暫くすると、星空に浮かんだトキヤラフの背後から三日月も昇ってきた。
パンとコーヒーの朝食を済ませ、装備を身に付ける。ザイルはハイキャンプから結んでいく。マルコスとザイルを結ぶのも三度目、三度も結ぶとだいぶ相手の気心も知れてくる。
マルコスのプラブーツは結局イマイチ乾かなかったらしく、マユミのやつを借りていくことにした。
マユミに見送られてマルコスと二人、2:25にハイキャンプを後にする。ハイキャンプから100mも進むと一面雪となり、アイゼンを装着。
ちょっとした雪の斜面を登ると、広い雪原のようなところに出る。で、この雪原からして「クレバスの巣」。マルコスが注意深く探りながらクレバスを渡っていく。
性質が悪いのが、連日の雪の所為でヒドゥン・クレバスがけっこうあること。が、マルコスの嗅覚はスゴイ!ヘッドランプも点けてないのに、ヒドゥン・クレバスを次々に探り当てていく。自分なら間違いなく気付かないようなのも幾つかあった。自分が先頭を歩いていたら・・・てなことを考えると恐ろしい。
マルコスは自分よりちょっと歩くのが速い。マルコスがクレバスを探るため止まるときが唯一呼吸を整えられる瞬間だ。コンテはお互いの呼吸が合わないと、スピーディーに行動できない。ちょっと無理してマルコスのペースに合わせる。
無事、クレバス帯という地雷原を突破。ちょっとした斜面を登ると、目の前にズタズタの雪の壁が現れる。そこを右に巻いていくと、突如としてドーンとミックスの壁が立ち塞がる。
ベースキャンプからもよく見えていた正面壁中間部の岩壁のようである。「無理だぁ~こんなとこ登れねぇ~」今回のルートじゃないと知りつつもそう思わずにおれない。いや、よくよく見ると右側の雪の繋がったところにラインが引けそうだ、ただし平地にいる時のようなコンディションでいればの話だが・・・などと冷静に観察している自分もいる。
岩壁の下を左に横切って緩い斜面を登っていくと、デカイ氷壁にぶち当たる。さらに左は巨大なクレバスに寸断されていて登行不能。ここを登るしかなさそうである。
雪の台座の部分を登って氷壁の基部に出る。だんだんと明るくなってきて、よくよく見ると氷にスクリューを入れた跡がある。やっぱここを登っているのね・・・。
雪の台座を登ったので、いわば途中から氷壁に取り付くことになる。途中と言っても、左を見ると氷壁はクレバスの中に消えているからどこが始まりかはわからんけど・・・。
出だしは2mほど垂直、そこを1mほど左に動いて直上することになる。問題は、垂直部の上がハングしていてそこを乗っ越さねばならぬことだ。おそらく自分がリードできる限界に近いグレード・・・ただし、こんな借り物のギアではなく、使い慣れた自分のギアであればの話だ。ブカブカのプラブーツに横ツメのアイゼン、まったく研いでないストレート・シャフトのアックスではまったくリードできそうな気がしない。
出だしのところにスクリューを1本セットし、マルコスがリードにかかる。マルコスのアックスも2本ともストレートで、刃はまったく研がれていない。そんなアックスでよく登れるなぁ・・・完全に腕で道具をカバーしている。
垂直部にアックスを打つが氷が割れて決まらない。硬そうだなぁ・・・。2本決まったところで体を左側に投げ出す。見ているこちらが怖い。
ハングの下まで直上して乗っ越しにかかる。ハングの上も氷は硬そうである。乗っ越し成功!と、マルコスはプロテクションも取らずにそのまま登っていってしまった。
ザイルいっぱいまで伸ばしたところでいよいよ自分の番。とりあえずスクリューを回収するわけだけど、ブラックダイアモンドのノブ付きのスクリューに慣れてしまった身には、ノブ無しの食いつきの悪いスクリューの回収は妙に骨が折れた。思わずスクリューの回収で腕がパンプしそうになる。
で、マルコスにコールしてクライム・オン。怖ぇぇ・・・マルコスはザイルをギンギンに引いてくれているが、左に出るのが妙に怖い。まぁ出ちゃえばなんてことないんだけど・・・。
垂直部はサクサクこなしてハングの乗っ越し。ハングの上にアックスを打つと、氷は割れるわ、アックスは抜けなくなるわ、こりゃ難儀だなぁ・・・。
左足がハングにかかってほぼクリア、さて次の一手と思い右のアックスを振るっていたら、左のアックスが外れた・・・またかぁぁぁ・・・以前西上州の「行者返しの滝」でフォールした時の再現だ。なんかトラウマになりそう・・・今回はトップじゃなくてよかった。
ハングの上はルンゼ状になっていて、斜度が70~80°くらいに落ちる。サクサク登ってビレイ・ポイントへ。ビレイ・ポイントに埋められたスノーバーは残置のようである。
2ピッチ目は斜度がグッと落ちて60~70°、容易。サクサク登ってようやく西稜に出た。6:10、完全に明るくなった。ここでようやく一本取り、行動食を口に入れる。
再びコンテに切り替えて登行を続ける。これ以降難しいパートはなかったのだけれど、登るにつれ周囲の状況が酷いことになってくる。至るところクレバスと崩壊したブロックだらけ。グズグズに亀裂の入った巨大なブロック群はボロボロのチーズのようである。
疲れた体に鞭打って、山頂の30~40m下まで辿り着いたが、ここから先へは行けない・・・岩から雪が剥がれてしまっていて、広いクレバスがポッカリ開いているのだ。それ以前に、山頂を見上げるとブロックが今にも崩壊しそうである。物理的にも、精神的にも、行けない・・・。
「今いるところを擬似山頂として登頂したことにしよう!」ということにした。マルコスの話では、ここ暫くここから先には誰も行ってない。
7:45、トキヤラフ登頂!(ちょっと釈然としないけど・・・)
あいにく下から雲が湧いてきていて下界は見えない。ほぼ雲海しか見えない状態だけど、まぁこれはこれでキレイではある。
写真を撮って下山に移る(8:20)。下山は延々と自分のトレースを辿る。核心の氷壁のみ1ピッチのラッペル。写真を撮りながらひたすらトレースを追う。
正面壁は雪崩の巣となっていて、ここは足早に横切った。と、自分らが横切って10分後、デカイのがあった。これまでも昼夜を問わず、至るところで雪崩の音は響いていたけど、今回ばかりはラッキーだったと言わざるを得ない。
クレバス帯の雪原にて、雪が団子になってどうしようもないのでアイゼンを外した。10:45にハイキャンプ着。
コーヒーを飲んで寛いでから荷物をまとめ、テントをたたんでさらにベースキャンプまで下山。12:30発、14:30にベースキャンプ着。
ベースキャンプにテントを設営し、装備を干して体を休める・・・のは自分らだけ。マルコスは休む間もなくお湯を沸かしたり、夕飯の準備を始めたり。まったくスゲーやつだ。
このあたりのガイドは余程じゃないと務まらん・・・$700のうち幾らもらうのか知らないが、それだけのためにこんなに苦しく大変な思いをするのは自分はまっぴら御免だ。
18:30、今日の夕飯も絶品。マルコスはまったく非の打ち所のない素晴らしいガイドであった。

1sep2010 核心部を越えたところ 後ろがトキヤラフ山頂
核心部を越えたところ 後ろがトキヤラフ山頂

1sep2010 朝日に映えるランラパルカ
朝日に映えるランラパルカ(6,162m)

1sep2010 朝のトキヤラフ ハイキャンプからマユミ撮影
朝のトキヤラフ(6,034m) ハイキャンプからマユミ撮影

1sep2010 ズタズタの雪面と雲海
ズタズタの雪面と雲海

1sep2010 取り付く島のない山頂 手前にクレバスがあって向こうに移れない
取り付く島のない山頂・・・手前にクレバスがあって向こうに移れない

1sep2010 擬似山頂にて登頂とする
擬似山頂にて登頂とした

1sep2010 足下に広がる雲海
足下に広がる雲海

1sep2010 核心部のラッペル(ハングの上)
核心部のラッペル

1sep2010 核心部を見上げる 右がトキヤラフ山頂方向
核心部を見上げる 右がトキヤラフ山頂方向

1sep2010 正面壁を見上げる
安全圏から正面壁を見上げる・・・この後雪崩れた

1sep2010 下部雪原のクレバス帯を上から
下部雪原のクレバス帯を見下ろす

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ハイキャンプに無事帰還
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