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イシンカ (5,530m)

2010/8/30 月
昨晩は20:00頃シュラフに入り、21:00にはテントを叩く雨の音がしなくなった。でも、ガスっててダメだろうなぁと思いつつ寝入ったのだが、1:00に起きてみると晴れている。昨日より雲は多いが星空も見えている。いやー実にツイてるなぁ自分らは。
昨日どうしようか迷っていたマユミも結局登ることになった。
コーヒーとみかんの簡単な朝食を済ませ2:15に出発。
今回はアプローチがそれほど急登でないためベースからプラブーツ着用。昨日プラブーツがぶかぶかで難儀したため靴下を二枚履いたら多少マシになった。アックスは今回もマルコスのアドバイスで1本のみ。
ベースキャンプを流れる川を渡渉し、イシンカ湖を水源としてイシンカの西面を流れ落ちる沢沿いにアプローチ。月明かりがあるのでやはりヘッドランプは必要ない。
イシンカ湖を越えたあたりでトレールを外れ、いったん湖の先に下りる。北西稜へ向かうためだ。実はイシンカはこのままトレースを辿れば西面から楽に登頂できてしまうのだが、単調な雪面歩きに終始してしまう。それじゃあまりにつまらん、ということで今回は北西稜を登る。
平坦な湖の周りには昨日降ったと思われる雪が数cm積もっている。氷河からの小さな水の流れを渡って対岸の北西稜基部へ。
北西稜西面の広大な雪壁の下に巨大な岩があり、これを左から回り込む。アックスを出し、小さな沢の右岸をドライツーリング(ウェットだけど・・・)で抜ける。沢にはまって足を濡らすとマズイので慎重に・・・。
左岸の平坦部に出て一安心。ここでハーネスを着けてザイルを結ぶ。オーダーは昨日と同じ。
右からもう少し岩場を登るとようやく雪面に出る。ここでアイゼンを着用。時間は5:00、標高は4,900m強。
雪面を右方向に詰めたところから雪壁に取り付く。雪壁は出だしが60°、中間部が70°といったところ。やはり雪壁というよりは氷壁に近い。
最初の40~50mほどコンテで上がると、雪壁に2mほどの垂直な段差がある。雪面の一部が下にスライドし、そこにできた段差だ。このままコンテで行けないこともないが、高度も増したことだし、マルコスに先行してもらって上から確保してもらう。
ザイルの40m分ほどを使い、ザイルがいっぱいになったところでスノーバーで確保してもらってマユミと同時に登る。2ピッチで傾斜の落ちた雪面に出る。ふくらはぎが攣りそうだぁ~。
ちなみに、スノーバーの使い方だけは自分の知っている方法と逆だった。角度の開いた方を下に向けている。これだと強度は確実に落ちるはずだが、何か理由があるのかもしれん・・・雪に食いつきやすいとか。
頭上をかぶった岩に押さえられていてまだ稜線上には出られない。岩の基部に沿ってしばらく斜面をトラバース。雪面が巨大なシュカブラ(と言うのだろうか?)で波打っていて甚だ歩きにくい。高さ1mほどのクリスマスツリーが無数に立っているような状態。
ようやく頭上の岩が切れ、雪面とのコンタクトラインを辿って稜線上に出る。稜線上にも無数のクリスマスツリー・・・歩きにくいことこの上ない。仕打ちに耐えながら歩を進め高度を稼ぐ。
しばらく登ると目の前に巨大なクレバスが・・・。コイツはデカイ。飛び越えるとき下をのぞきこんでもまったく底が見えなかった・・・いとオソロシや。マユミは完全に戦意喪失。
今回の山行は、昨日の初日からして、マユミにとっては技術的にも体力的にも実力以上のものとなってしまったようである。
無数のクリスマスツリーの群生する斜面をさらに登ると、ようやくヘッドウォールの基部に出る(9:10)。体力的にほぼ限界に達したマユミは下山のことを考え、「ここで待っている」と口を開いたが、どうやら下山はピークの反対側を下りるらしいので渋々登ることとなった。
ヘッドウォールは上部がかぶっていて岩の部分はまず登れない。右に回りこむと雪壁になっているのだがかなり急。しかも、しかも、雪面の状態は有り得ない悪さだ。剥がれかかった雪面が魚の鱗のように折り重なっている状態。いわば無数の雪の切片がドミノ倒しのコマのように上に向かって並んでいる状態だ。いとオソロシや・・・。
しかも右に回り込みすぎると(そもそもこんな不安定な鱗の上をそれほど回り込む気にはならんが・・・)、北西稜から外れてしまい、足下が絶壁となって切れ落ちてしまう。
うぅぅむ、山頂まで残り100m・・・だが、もし自分らだけで来ていたらここから敗退していたかも。
マルコスは岩と鱗のコンタクトラインにルートを取った。登るならそこしかないだろう。一歩一歩慎重に鱗を乗り越えていく。鱗は見た目よりはずっと安定していた。
10:00、ようやくイシンカの山頂に立つ!晴れていて眺めは最高だ。明日から登る予定のトキヤラフ、昨日登ったウルス、プカランラ(6,156m)南面の巨大な壁とその奥に鎮座するチンチェイ(6,222m)、そして遠く東の方にはワンチャン(6,395m)のピラミダルなピークが見える。至福のひと時。今日も他パーティーはおらず、自分らだけで山を独占だ。
15分くらいで下山にかかる。下山は例によって自分が先頭。登ってきたところと逆側の雪壁をクライムダウンする。こちら側は50mも下りれば前向きで歩けるようになる感じ。
5mほど下りたところにパックリとクレバスが口を開けていた。一番狭いところを狙っても対岸まで足が届きそうにない。一度登り返し、マルコスにザイルを張ってもらってロアーダウンで無事着地。そのまま斜度の落ちるところまで下降して待機。
続いてマユミが8環でラッペル。問題は最後のマルコス。スノーバーを残置するわけにもいかんし、スノーボラードで下降できるほどの強度はない。クライムダウンに入る。
さすがに緊張する。落ちたときのことを考え、雪面にアックスを打ち込んでビレイの体勢をとる。
マルコスはクレバス手前の雪面を丹念に崩し、前向きに滑り降りて無事着地。ふ~よかった。
その後は右側に張り出した雪屁にだけ注意して、なだらかな斜面をひたすら歩いて下りる。途中から雪が団子になって難儀した。
右に大きく回り込み、ランラパルカの基部でトレールに合流。ここで装備を解き、マルコス特性のサンドウィッチの昼食とする。刻んだ玉ねぎとトマトにツナを加え、レモン汁を絞った具は最高に旨かった。思わず3個半も食べてしまったが、おそらくこのとき食べた生の玉ねぎを上手く消化できず、後で腹を壊すことになった・・・。
下りのトレールからはイシンカの北西稜が正面に見え、今回登ったルートをじっくり確認できた。
途中、氷河の運んだ巨大な岩塊群を抜け、14:50にベースキャンプに帰ってきた。
マルコスは山から下りるとすぐにお湯を沸かし、夕飯の準備に入る。休む暇がない。まったくすごいやつだ。
夕飯にマルコスが作ってくれた中華丼風の食べものは見るからに美味しそうだったのだが、自分は腹を壊してほとんど食べられなかった・・・マルコス、スマン。
20:00に就寝。今日の時点で、マユミはトキヤラフのハイキャンプから上には行かないことに決めたらしい。決心は固いようである。

30aug2010 イシンカの雪壁
北西稜西面の雪壁

30aug2010 岩の下をトラバース
稜線直下の岩の下をトラバース

30aug2010 稜線上に出る
稜線上に出る

30aug2010 嫌らしいギャップを越えるマルコス
嫌らしいギャップを越えるマルコス

30aug2010 クレバスがポッカリと口を開ける
ポッカリと口を開けるクレバス・・・

30aug2010 最後の嫌らしい登り 慎重に鱗を一枚一枚越えていく
山頂直下の嫌らしい登り 鱗状の雪片を一枚一枚慎重に越える

30aug2010 イシンカ 5530m 登頂
イシンカ(5,530m)登頂

30aug2010 山頂からの眺め 中央のピラミダルなポークがワンチャン 6395
山頂からの眺め 中央のピラミダルなピークがワンチャン(6,395m)

30aug2010 下降路から見上げるイシンカ
下降路から見上げるイシンカ 左の稜線が北西稜

30aug2010 ベースキャンプから見るトキヤラフ
ベースキャンプから見る残照のトキヤラフ(6,034m)
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